数年間にわたる歯列矯正治療において、全ての患者が夢見る最高のイベント、それが「ブラケットオフ」、つまり装置を外す日です。この日は、長い努力が報われる、まさに卒業式のような特別な一日と言えるでしょう。では、その記念すべき日は、一体どのように進んでいくのでしょうか。まず、歯科医師が最終的な歯並びと噛み合わせに問題がないことを確認した後、いよいよブラケットの撤去が始まります。専用のプライヤーのような器具でブラケットを一つひとつ掴み、パチン、パチンと音を立てながら外していきます。痛みはほとんどなく、歯が少し押されるような、あるいは引っ張られるような感覚がある程度です。全てのブラケットが外れた瞬間、あなたは今まで味わったことのない解放感に包まれるでしょう。そして、舌で自分の歯をそっとなぞってみてください。そこには、凹凸のない、驚くほどツルツルとした歯の表面が広がっています。次に、歯の表面に残った接着剤(レジン)を綺麗に除去し、歯全体のクリーニングと研磨が行われます。長期間装置に覆われていた歯が、本来の輝きを取り戻す瞬間です。そして、全ての処置が終わった後、鏡で自分の新しい笑顔と対面します。そこには、長年コンプレックスだったガタガタの歯並びではなく、美しく整った理想の歯列で微笑む、新しいあなたがいます。この感動は、経験した者にしかわからない、何物にも代えがたい喜びです。しかし、この感動的な一日で、歯列矯正が完全に終わったわけではありません。むしろ、ここからが新たなスタートです。歯は、元の位置に戻ろうとする「後戻り」という性質を持っています。この後戻りを防ぎ、美しい歯並びを定着させるために、ここからは「保定期間」に入ります。すぐに歯型を取り、あなた専用の保定装置「リテーナー」が作製されます。このリテーナーを、歯科医師の指示通りに毎日装着し続けることが、これまでの努力を無にしないための絶対的なルールです。ブラケットオフはゴールであり、同時に、その美しい笑顔を生涯守っていくための新しい生活の始まりでもあるのです。