原因不明の頭痛や肩こり、めまいといった「不定愁訴」に悩む方が、その原因が実は「噛み合わせの悪さ」にあるケースは、決して少なくありません。そして、そのような場合に、歯列矯正治療が根本的な解決策となり得ることがあります。なぜ、口の中の問題である噛み合わせが、全身の不調を引き起こすのでしょうか。そのメカニズムは、主に三つの経路から説明することができます。第一に、「筋肉の連鎖」による影響です。噛み合わせが悪いと、私たちは無意識のうちに、顎の位置をずらしたり、特定の筋肉だけを過剰に使ったりして食事をします。この咀嚼筋のアンバランスな緊張は、首、肩、背中といった周辺の筋肉に次々と伝播していきます。これが、マッサージをしてもすぐにぶり返す、慢性的な肩こりや首こりの原因となるのです。第二に、「顎関節」を介した影響です。顎関節は、頭蓋骨に対して下顎がぶら下がっている、非常にデリケートな関節です。悪い噛み合わせは、この顎関節に常に不自然な力を加え続け、関節円板のズレや炎症を引き起こします(顎関節症)。顎関節の周囲には、体のバランスを司る三半規管や、様々な神経が集中しているため、顎関節の異常がめまいや耳鳴り、さらには頭痛を誘発することがあります。第三に、「自律神経」への影響です。噛み合わせの情報は、脳神経の中でも最も太い「三叉神経」によって脳に伝えられます。噛み合わせのズレという異常な信号が持続的に脳に送られると、自律神経の中枢が混乱をきたし、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうことがあります。これが、動悸、不眠、倦怠感といった、全身にわたる様々な不定愁訴の原因となり得るのです。歯列矯正治療は、これらの問題の根本原因である「噛み合わせ」を、本来あるべき正常な状態へと導く治療です。歯を正しい位置に動かし、顎関節や筋肉への負担を取り除くことで、長年あなたを悩ませてきた不定愁訴の連鎖を断ち切る可能性を秘めているのです。
噛み合わせが原因だった?不定愁訴を改善する歯列矯正の力