歯列矯正治療において、患者さんが日常的に扱う「顎間ゴム」。それは一見するとただの小さな輪ゴムにしか見えないかもしれません。しかし、その実態は、治療を成功に導くために緻密に計算され尽くした、最先端の歯科材料なのです。その知られざる技術的な背景を紐解いてみましょう。まず、矯正用ゴムの材質は、主に二種類に大別されます。一つは、天然ゴムを主成分とする「ラテックスゴム」です。ラテックスは非常に優れた弾性を持ち、弱い力を長時間にわたって持続的に歯に加え続けるのに適しています。矯正治療で求められる生理的な歯の移動に最適な素材と言えるでしょう。しかし、一部の患者さんはラテックスに対してアレルギー反応を示すことがあります。そのために開発されたのが、合成素材で作られた「ノンラテックスゴム」です。アレルギーのリスクがない安全な素材ですが、一般的にラテックスゴムに比べて弾性の持続力がやや劣る傾向があるため、より頻繁な交換が必要になる場合があります。次に重要なのが、ゴムが発揮する「力」の規格です。矯正用ゴムのパッケージには、「Medium」や「Heavy」といった表記と共に、「4oz」や「6oz」といった数値が記載されています。この「oz(オンス)」は力の単位であり、1オンスは約28.35グラムに相当します。歯科医師は、動かしたい歯の種類や距離、患者さんの骨の状態などを考慮し、最適な力のゴムを選択します。強すぎれば歯根にダメージを与え、弱すぎれば歯が動かない。この絶妙な力加減こそが、専門家の腕の見せ所なのです。さらに、ゴムの「内径」も重要な要素です。パッケージには「3/16」や「1/4」といった分数で表記されており、これはゴムの直径をインチで示しています。かけるフック間の距離に応じて適切な内径のゴムを選ばないと、想定通りの力が発揮されません。このように、何気なく使っている矯正用ゴム一つひとつが、材質、力の強さ、サイズの組み合わせによって厳密に管理された医療機器なのです。その小さな体に秘められた科学技術が、あなたの歯並びを理想へと導いています。
矯正用ゴムの材質と力の秘密!知られざる歯科材料の世界